- 2011.09.05
- 関の考え方
年金問題 第一回 「支払額と給付額」
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年金について、有権者から「このような年金額では、生活が出来なくなる」との声がよく寄せられて来ます。そこで、年金制度について皆様と考えてみようと思います。
ご意見は、私のfacebookにどしどしお寄せください。楽しみに待っています。
第一回は、皆様のお声から分析をしてみましょう。
1.有権者から寄せられる声
「受ける年金額は少ないし、物価が上がっても年金額は上がらないし、天引きまでされるし、このままでは生活できなくなるわ」
*可能な範囲で関西弁を共通語に書き換えてあります
このようなご意見を高齢者から毎日のように耳にします。この言葉をもう少し分割してみると、
①年金受給額が少ない(生活水準が保てない)
②物価は上がって行くのに、年金は同じようには受給額が上がって行かない
③天引き(介護保険料など)を自動的にされる
と、なるように思えます。
そこで、年金ブログの初回である今回は、もっとも問題の核心である上記①について調べてみました。
2.年金の受給額=老齢年金=
年金には、老齢年金、障害年金、遺族年金など、幅広く所得保障がなされていますが、ここでは、特に老齢年金について述べてみます。
(1)年金の生涯支払額
16,900円/月×12ヵ月×40年間(20歳~60歳)=811万円
*月額支払年金保険料は、2005年から前年月額13,300円に280円/月を毎年増額(2005年は13,580円)する制度となっており、ここでは、2029年を最終とする最高額(16,900円/月)で試算。
制度の2階建て、3階建て部分は試算外とした。
(2)年金の受給金額
①月額受給金額
138円/月×(保険料支払い月数+α)
*α=免除期間扱い。国民年金では、所得別に4種類の支払免除の申請が可能。
免除期間は、年金保険料を支払ったものとして扱われる。
保険料支払い月数は、20歳から60歳まで40年間(480ヵ月)で試算。
138円×480ヵ月=66,240円/月
よく、ひと月で約6万6千円の受給と言われる根拠がこれ。
②生涯年金受取額試算
男性の平均寿命を80歳とし、女性を87歳として試算。
男性:66,240円/月×12ヵ月/年×15年間(65歳~80歳)=1,192万円
女性:66,240円/月×12ヵ月/年×22年間(65歳~87歳)=1,749万円
(3)支払・受給差引金額
上記の(1)支払年金保険料「811万円」と(2)生涯年金受取額を見て頂くと明らかなように、受け取り金額の方が数百万円多くなる。
※注意点:夫婦とも働き、一人暮らし、・・・・など、色々な家族生活形態があるが、ここでは、代表的なものを記載。
3.生活実感として
ここで、実生活上での金額の多寡をみてみましょう。夫婦2人ぐらしの家庭とします。
年金受給額の基本金額は、既に見ました。
ここでは、実生活で必要となる生活費の超概算(衣食住)を試算してみます。
医療費などは、個別事情が大きいので、ここでは記載を避けております。
(1)衣
月額 1万円として試算。 *洗濯・クリーニング代なども含む。
(2)食
1日3回×500円×30日/月×夫婦2人=9万円/月
(3)住
ローンを組んで家を買って完済している人や、今、家賃を払って住んでいる人など色々ですが、試算のために毎月一家で5万5千円の支払いをしていると仮定します。
家庭根拠:
①賃貸住宅の平均的な全国の料金(賃貸住宅協会)5万6千円/月
②住宅購入者の場合
(例)2500万円(家を購入+リフォーム実施、40年間居住)とすると
2500万円÷40年間÷12ヵ月=5万3千円/月
上記①②より大差がないので、5万5千円/月で以後試算
(4)合計
上記の衣(1)、食(2)、住(3)の合計額が15万5千円/月となります。
これ以外に先にも記しましたが、特に高齢者は医療費などの費用が嵩みます。
(5)年金額との差額
年金給付額6万6千円(天引きを除く)/月×夫婦2人=13万2千円/月
上記(4)の生活費 15万5千円/月。
差額は、「2万3千円/月の赤字」となります。
つまり、このように一時的な国民年金の給付金額から見ると日々の生活そのものは決して楽ではありません。食費を削ったり安い家賃の家に住んだりと苦労があります。
4.資金的なやり繰り
このような中、生涯を通して資金のやり繰りをすることが大切です。
それぞれの家計の事情によって、いろいろな対処方法が採られています。
①年金制度の2、3階建て部分により多額年金保険料を支払い、給付も多く受ける。
②一号被保険者は自営業を60歳を過ぎても継続し、事業収入を上げ続ける。
③親からの家を相続して、家賃等の出費を抑制する。
④夫婦共働きをしたり、若い時から貯金を積極的に行い、老後の出費に備える。
⑤独立した子供など、親族から支援を受ける。
等等、様々な方法があります。
これらの対処方法が旨く取れない場合に、本当に生活が苦しいものになります。
逆に言えば、これらの対処方法を組合わせて若い時から生活を続けていなければ上記3(5)のように、生活が非常に苦しくなるの実態です。
生活に余裕のある人はいいとしても、現実にはギリギリで工夫をしながら、日々の生活を送っている方が多いのではないでしょうか。
生涯を通しては、「支払う額より、給付を受ける額が多い」のが年金制度。
上記の根拠の通りです。
少子高齢化の現在、少なくともこの年金制度を存続させてゆくために何が必要か、皆さまと共に考えてゆきたいと思います。
これらの年金制度につきまして、次回以降、詳しく制度設計を見てゆくことにしましょう。